ユーザーヒアリングとは、ユーザーから直接、商品やサービスに関する意見や問題点を聞くことです。
ユーザーヒアリングをおこなうことで、ユーザーに潜在化している細かなニーズや問題点を的確に把握でき、顧客が真に求めるサービスを提供できるようになります。
マーケティングを考えるうえで、ユーザーヒアリングは重要です。
しかし、どうユーザーヒアリングを進めればいいかがわからないという方も多いのではないでしょうか。
ユーザーヒアリングは単なるアンケートとは異なります。
ニーズを掘り下げるためには明確な目的設定や事前の考察が必要であり、質問内容の精査も重要です。
具体的には、以下のステップで進めていく必要があります。
- 仮説を設定する
- 質問項目を作成する
- ヒアリングシートを作成する
- 実施
- 結果を考察する
そこで、この記事では、ユーザーヒアリングの重要性をご紹介したうえで効果的なユーザーヒアリングをおこなうためのポイントと具体的な手順について詳しくご紹介します!
本当に売れる商品とは、ユーザーの潜在ニーズまで明確に把握し、ニーズにピンポイントで訴求できる商品です。自社の商品・サービスをより多くの人へ届けられるよう、ぜひ本記事を通してユーザーヒアリングへの理解を深めてください。

ユーザーヒアリングとは?アンケートとの違いは「数値以外の情報を把握すること」
ユーザーヒアリングとはその名の通り、ユーザーへのヒアリング調査のことです。
消費者へ直接的に意見を聞けるためユーザーニーズを把握しやすい点が大きなメリットとなります。
問題点の改善や新商品の開発など、ユーザーヒアリングはさまざまな用途でおこなわれますが、特に製造者がダイレクトに消費者と取引をするD2Cブランドを立ち上げる前には、ユーザーヒアリングは必須だといえます。
アンケートは定量調査であり、数値化できる情報を収集することを目的としています。
例えば満足度やおすすめ度など、点数をつけて評価するような情報です。
アンケートは定量調査であり、数値化できる情報を収集することを目的としています。
例えば満足度やおすすめ度など、点数をつけて評価するような情報です。
一方、ユーザーヒアリングは定性調査と呼ばれるもので、数値で表すのが難しい情報を調査することが目的です。
例えばユーザーの行動の理由や、行動の背景にあるものなどを調べる場合には、ユーザーヒアリングが適しています。
つまり、ユーザーヒアリングにおいて重要なのは数値で計れない情報の把握です。
マーケティングにおいては、潜在ニーズを把握することがユーザーヒアリングの最も重要な目的といえます。
ユーザーヒアリングは「目的の設定」が重要
ユーザーヒアリングをおこなう前の事前準備として、「目的」を明確にしておきましょう。
前述した通り、ユーザーヒアリングでは顧客の潜在ニーズの把握が最重要の目的となります。ニーズに即して商品の開発や修正をおこなえば、より消費者が「欲しい」と感じる商品・サービスになるはずです。
その他にも、ユーザーヒアリングでは企業にとって有益なさまざまな情報を得られます。ユーザーヒアリングをおこなう際は、ヒアリングによって何を知りたいのか、目的をいくつか挙げ、目的に即して質問項目を考えていくことが大切です。
目的が曖昧なままヒアリングを進めてしまうと、的外れな情報しか得られない事態にも陥りかねません。
例えば、以下のような項目がユーザーヒアリングの目的としてあげられます。
- ニーズの有無を事前に検証するため
- 顧客情報確保のため
- 市場や顧客の変化を把握するため
- ユーザーの趣味嗜好を理解するため
- ユーザーの課題や問題を深堀りするため
上記の目的例について、それぞれ企業にとってどう有益となるのか、以下に詳しくご紹介します。
ニーズの有無を事前に検証するため
商品の新規開発のためにユーザーヒアリングをおこなうのであれば、「ニーズがあるかないか」を事前に把握しておくことは重要といえます。
商品やサービスの価値を決めるのは顧客であり、顧客ニーズに即して商品を開発することは、マーケティングにおける常識のひとつです。
しかし、マーケティング業務に慣れていない上層部の経営陣や、商品の開発スタッフはそのあたりをあまり理解できていないこともあります。
商品の企画・開発に携わったスタッフにとっては高い価値があるように思える商品であっても、顧客のニーズに合っていなければサービスや商品を購入することはないでしょう。
品質も良く価値ある製品だと思える商品であってもユーザーにとってはそうではないという食い違いが起きる可能性もあります。
そうした「ニーズのズレ」を防ぐためには事前のユーザーヒアリングが重要です。
ユーザーヒアリングによってユーザーの実際のニーズを知ることができれば、経営者や開発スタッフも顧客にとって価値のある商品がどのようなものかを理解できるでしょう。
事前にユーザーヒアリングをおこなっておけば、顧客がどんなところを重視して商品を選んでいるか、何に価値を見出しているかがわかります。
つまり、商品開発において重視すべきポイントが事前に把握できるのです。
顧客ニーズを事前に把握したうえで企画・開発された商品やサービスなら、ユーザーにとっても価値あるものになるはずです。
顧客情報確保のため
新規商品の開発やD2Cブランドの立ち上げた時などは、アプローチできる顧客リストを確保していることは少ないはずです。
顧客との接点が少なくアプローチできるチャネル(経路)がない場合、顧客情報を得ることを目的としたユーザーヒアリングが効果的です。
また事前にユーザーヒアリングをおこなっておけば、ペルソナの設定も容易になります。
ペルソナとは、典型的なユーザー像のことで、顧客層にどんなニーズがあるかを想定する際に役立ちます。
ユーザーヒアリングの目的として、商品開発後に直接アプローチできる顧客リストの確保と、ペルソナ像の把握を設定しておけば、必要な質問項目を事前に案出しておけるでしょう。
市場や顧客の変化を把握するため
これまでは業界内で一定のシェアを確保できていたにもかかわらず、次第に売上が低迷してきてしまった……そんなときにも、ユーザーヒアリングは効果的です。
もともとは順調だった売上がだんだん落ち込んできたということは、市場や消費者の変化を見落としている可能性があるためです。
売り上げ低迷時にユーザーヒアリングをおこなえば、市場や顧客ニーズの変化を知ることができ、商品をどう改善すればいいかがわかります。
製品に問題はないにもかかわらず売上が落ちたときには、市場や顧客ニーズの変化を把握することを目的として、ユーザーヒアリングを実施してみましょう。
ユーザーの趣味嗜好を理解するため
顧客の趣味や嗜好を理解することも、ユーザーヒアリングにおける重要な目的です。
なぜなら、人は自分が大きく興味をもっているもの、好きなものにはお金をかけやすい傾向があるためです。
例えば、大好きなアイドルのためにはいくらつぎ込んでも構わない、趣味のキャンプ用品はついつい集めてしまうなど、人は自分の趣味には極端に高額のお金を使うことがあります。
もしも、そうした趣味嗜好をついた商品を開発できれば、高額でも売れる可能性が高くなるでしょう。
つまり、ユーザーの趣味や嗜好に合う商品・サービスであれば、高額な料金を支払ってでも利用してもらえる可能性が高いというわけです。
企業で手がけている商品が人の趣味や嗜好にからむ可能性があるのであれば、ぜひ趣味嗜好の把握も目的に掲げ、ユーザーヒアリングを実施してください。
ユーザーの課題や問題を深堀りするため
類似商品や競合との差別化をはかりたい、より優位に立ちたいと考えるのであれば、課題や問題の把握を目的としてユーザーヒアリングをおこなうとよいでしょう。
そこで重要になるのが、課題や問題点を調べるためのユーザーヒアリングです。
ユーザーヒアリングの結果、想定していた課題・問題点が正しいかどうか、どれほど深刻な問題となっているかなどが、より具体的にわかります。
もしも、問題点がある程度わかっていても、費用面などの事情によりすぐには改善できないケースも少なくないはずです。
しかし、ユーザーヒアリングによって問題・課題が顕在化すれば、改良に出るべきかどうかや、どう改善すればいいかが明確になります。
製品を改良しなければ売上がさらに落ち込むとわかれば、コストや投資、カニバリゼーション(自社製品同士の共食い現象)のリスクはすべて度外視したうえで、改良に当たるという選択をしやすくなるでしょう。
また、事業を拡大する前に何かしらの課題はないか調べる意味で、ユーザーヒアリングをするのも効果的です。
想定される問題点が事前にわかっていれば、解決したうえで事業を展開していけます。
ユーザーヒアリングの手法
次に、ユーザーヒアリングの具体的な手法についてご紹介します。ユーザーヒアリングの手法には、以下の方法があります。
- 直接のインタビュー
- アンケート用紙を使ったヒアリング
- SNSを利用するソーシャルリスニング
- Webアンケート(クラウドソーシング等を利用)
ニーズの把握に最も有効なのは、ユーザーへの直接インタビューする方法です。
対面で会話を掘り下げていけるため、より深いユーザー意識を調査できる点は対面ならではのメリットといえます。
一方、SNSやWebを通しておこなうアンケートでは、本音を引き出しやすい点がメリットといえます。
ユーザーからすると面と向かってインタビューされるよりも正直な意見を言いやすいため、特に否定的な意見においては、気遣いでごまかすことのない本音を聞きだしやすくなります。
ネット上でおこなうユーザーリスニングでは、集計等の作業を比較的簡単に済ませられる点も魅力的です。
ユーザーヒアリングの流れを5ステップで解説
企業それぞれの目的を達成するためには、質問項目をどう設定するかが重要です。
ユーザーの潜在ニーズを引き出す質問項目を設定できれば、今後の商品開発・改良等にもいかしやすくなります。
必要な情報を収集できる質問項目を設定し、なおかつ収集した情報を有効に利用するために、下記の流れに沿ってユーザーヒアリングを進めていきましょう
- 仮説を設定する
- 質問項目を作成する
- ヒアリングシートを作成する
- 実施
- 結果を考察する
この5つのステップについて、下記に具体的な内容をご紹介します。
まず、顧客から得られるであろうニーズや問題点について、仮説を立てましょう。
仮説があれば聞きたいことも自ずとまとまり、質問項目の作成にも役立ちます。
例えば、キャンプ用品ブランドを新たに立ち上げるとすると、以下のような仮説が立てられます。
・ユーザーは趣味でキャンプをやっている人が多いから、見た目にこだわった商品を求めているだろう
このとき、仮説に先入観が入っていないかを考えておくことも重要です。
先入観に囚われてしまっていると、実際のニーズとズレていた場合に質問項目の修正が難しくなるためです。
上記の仮説だと、本当は「見た目よりも質を重視したユーザーが多い」という可能性もあります。
仮説はあくまでも予測ですので、立てた仮説は間違っているかもしれない、という意識を持ってユーザーヒアリングを行うことが大切です。
いくつか仮説を立てておくと、臨機応変に対応できるでしょう。
また実際の質問の際は、仮説が合っているなら合っている根拠、間違っているのであれば間違っている根拠を得られるよう深堀しながら質問していきましょう。
上記のキャンプ用品の場合だと、はじめに立てた仮説が合っていれば「見た目にフォーカスした商品づくり」が重要ということになりますし、間違っていれば「機能」など、その他のユーザーが求める側面を重視し商品を改良していく必要があるでしょう。
このように、はじめに仮説を立てておき、仮説を裏付ける質問を考えていくことで、ニーズを明確にしやすくなります。
仮説を立てたら、次はその仮説に基づいた質問項目を作成します。
質問項目の基本となるのは、仮説が正しいことの根拠になる質問、そして仮説が間違っていることの根拠になる質問です。
仮説の根拠となる考えについて顧客に尋ねたり、あえて仮説が間違っていることを前提とした質問をしたりすると、仮説の正誤を立証できる根拠となる答えを得られるはずです。
例えば、さきほどのキャンプ用品であれば、「多くのユーザーは見た目を重視する」という仮説を裏付けるには、以下のような質問をおこなうとよいでしょう。
・キャンプ用品の見た目は重要だと思いますか?
・キャンプ用品は、見た目と機能、どちらが重要だと思いますか?
・普段どんなところを重視してキャンプ用品を買いますか?
・見た目がよく高いキャンプ用品と、機能性が高く安いキャンプ用品ならどちらを買いますか?
その他にも、ユーザーの感情や心持ち、行動とその原理・背景などを聞けるような質問も準備しておきましょう。
例えば、以下のような質問が挙げられます。
・キャンプにはどれくらいの頻度で行きたいと思っていますか?
・新しいキャンプ用品を買ったときはどんな気持ちになりますか?
・最近買ったキャンプ用品の購入の決め手はなんですか?
・最近の買い物のなかで特にテンションが上がった商品を教えてください。
このように、ユーザーの感情面に触れながら質問をすることで、ユーザーが心を開きやすくなり、本音を引き出しやすくなります。
対面であれば、相手の感情に共感しながら話を進めることで、そのあとの質問にも好意的に答えてくれるでしょう。
また、質問には「はい・いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンと、具体的に答えを話す必要があるオープンクエスチョンがあります。
これらの質問形式を織り交ぜながら使い分けることも重要です。
具体的には、話を広げたいときには「どう思いますか?」といったオープンクエスチョンを使用し、相手の意思を明確に確認したいときには「好きですか?嫌いですか?」のように答えを限定できるクローズドクエスチョンを使うとよいでしょう。
潜在ニーズを把握するためにはユーザーの本音を引き出す必要があり、そのためにはある程度の信頼関係が必要です。
質問は答えやすいものから投げるようにし、エモーショナルな質問もいくつか用意しておきましょう。
質問項目をまとめたら、次はヒアリングシートを作成します。
ヒアリングシートとは、実際のインタビュー場面で使用する質問事項を順序だてて記載した用紙です。
基本的には、ユーザーへのインタビューはヒアリングシートに沿って行うことになります。
基本の流れとなるヒアリングシートが用意できていれば、話が盛り上がって脱線したり、雑談が続いたりした後も軌道修正がしやすくなります。また必ず聞いておきたい質問項目を飛ばしてしまうなどのリスクも減らせます。
質問の順序としては、例えば以下のような流れを意識するといいでしょう。
① エモーショナルな質問で心を掴む(ユーザーの答えに共感しながら話を進める)
② クローズドクエスチョンで答えやすい質問をする
③ よりニーズを深堀りするためオープンクエスチョンで質問をする
④ 仮説通りに進んだ場合はクローズドクエスチョンでニーズを明確にする
⑤ 仮説と異なる可能性があるときは異なる場合の根拠を裏付ける質問をする
ユーザーアリングでは仮説の裏付けを目的とするため、仮説通りだった場合とそうでなかった場合について、それぞれ別の質問を用意しておくといいでしょう。
新規開発や既存商品の改良など、企業それぞれの目的を果たすための質問も織り込んでいきます。
「傾向を把握する質問」⇒「より深堀りする質問」⇒「ニーズを明確にする質問」という順序で進めていくとスムーズです。
例えば、キャンプの例だと以下のような流れになります。
質問:「キャンプ用品は見た目と機能面、どちらを重視しますか?」CQ
↓
答え:「どちらかというと見た目かな」(仮説通り)
↓
質問:「見た目が好みじゃなかった場合、どのくらいの性能なら買いますか?」OQ
↓
答え:「見た目が好きじゃなかったら買わないかな」
↓
質問:「あなたは機能よりも、見た目を重視したいということですね」CQ
↓
答え:「そうですね」
このように、ヒアリングシートはユーザーの視点に立ち、心を開いてもらうことを意識しながら質問順序を考えていきましょう。
ユーザーヒアリングを実施する際はヒアリングシートに従うだけでなく、短いやりとりのなかでユーザーとの信頼関係を築いていくことも重要です。
そこで、事務的な質問にならないよう意識しながら実施していきましょう。
ときには雑談も挟みながらユーザーが話しやすい状況をつくることができれば、ユーザー自身も意識しないタイミングで、本音を聞き出せる可能性が出てきます。
ユーザーとの会話は予測したヒアリングシート通りに進むとは限らず、本来の質問項目とは直接関係のない話題で盛り上がってしまうこともあります。
そんなとき、無理やり話を変えたり、突然それまでの話と関係ない質問に戻ったりしないよう注意しましょう。
ユーザーヒアリングでは、すべての質問をヒアリングシート通りに進めることよりも、信頼関係を築いて本音を聞きだすことのほうが大切だからです。
ユーザーとの円滑なコミュニケーションを意識していれば、思わぬ角度から重要な情報が得られることもあります。
ユーザーへのインタビューが終わったら、ユーザーヒアリングを通して得られたユーザーの意見をまとめ、結果の考察作業に移ります。
複数のユーザーからヒアリングした意見や情報をまとめ、ユーザーの傾向や潜在的なニーズなどを考察しましょう。
ユーザーヒアリングを通じて得られたデータをもとに、製品の改良が必要になるのか、マーケティング戦略に問題があるのか、ニーズに沿った製品だと顧客に紹介するにはどのような方法が効果的かなどを考察し、今後にいかしていきましょう。
それができてはじめて、意味のあるユーザーヒアリングになります。
まとめ
ユーザーヒアリングは効果的な情報収集手段のひとつですが、明確な目標と仮説がなければ最大限の効果を発揮できません。
ユーザーヒアリングをおこなう際は、まず現状に即した「目的」をはっきりさせておきましょう。
そのうえで、必要な情報をしっかり集めるため、以下の流れに沿って準備を進めていきます。
- 仮説を設定する
- 質問項目を作成する
- ヒアリングシートを作成する
- 実施
- 結果を考察する
質問項目は仮説を裏付けられるものを選び、インタビューの際はユーザーの話を真摯に聞き、心を開いてもらうことを意識しましょう。
しっかり準備したうえでユーザーヒアリングを行えば、ユーザーの潜在的なニーズの把握につながり、ユーザーにとって本当に必要な商品が見えてきます。
今回ご紹介したユーザーヒアリングの手順を参考に有用な情報収集をおこない、今後の事業に役立てていきましょう。