デジタルD2C事業を行っていると、『ポップアップストアの開催』を考える方は多いのではないでしょうか?
ポップアップストア(ポップアップショップ)とは、短期間のみ出店される期間限定の店舗のことです。
ブランドの認知やテスト販売、新作発表など、さまざまな目的で出店されます。
オフラインで店舗を構えていないD2Cブランドにとって、ポップアップストアは顧客とリアルで接することができる貴重なチャネルです。
うまく活用できれば、ブランドの認知にもつながり、サイトへの流入や今後の売上にもつなげることができます。
しかし、目的をはっきりさせないまま無計画にポップアップストアを出店しては、効果が得られにくいため注意が必要です。ポップアップストアを出店する際は、目的を明確にし、目的やブランド業種に合った方法を工夫することが、成功のカギとなります。
そこで、この記事では、D2Cブランドの成功を目指す企業に向けて、ポップアップストアに関する基礎知識と成功のポイントを紹介します。

ポップアップストアとは
ポップアップストアとは、短期間のみ開催される期間限定型の店舗を指します。
ポップアップという名前の通り「突然現れる店」という意味合いが強く、従来の期間限定ショップと異なり「イベント性」や「アミューズメント性」が重視される傾向があります。
ショッピングモールの催事場や、空き店舗のほか、駅やイベントスペースで開催されていることが多いです。
最近では、b8ta(ベータ)のようなD2Cブランドの百貨店のようなポップアップストアも人気で、ベンチャー・大企業問わず賑わっています。
ポップアップストアの強みは「期間限定」であることです。
出店期間が過ぎると二度と訪れることができないため、話題性も高めやすく、ブランドのプロモーションとしての利用価値が非常に高いといえます。
ポップアップストアを出店するメリット
ポップアップストアを出店するメリットは、下記の5つが挙げられます。
- ランニングコストを抑えつつテストマーケティングをおこなえる
- ブランドの認知度アップ
- 顧客と直接コミュニケーションがとれる
- SNSでの情報拡散が期待できる
- 出店実績を明記できる
1つずつ詳しく見ていきましょう。
メリット➊:ランニングコストを抑えつつ、テストマーケティングをおこなうことができる
ポップアップストアは一時的な出店となるため、リスクを抑えて最小限のコストでオフライン出店できます。
特に、これからオフラインでの販売を検討する企業であれば、テストマーケティングとしてポップアップストアを利用する価値は高いといえるでしょう。
D2Cブランドの立ち上げ時は特に、ミニマムで投資をなるべく抑えて始めることが重要です。
理由として、立ち上げの当初は売上を伸ばしにくく、売上を安定させるまでに数か月~数年単位の時間がかかるためです。
最初からオフライン店舗を構えることは大きなリスクであり、最悪の場合、回収できずに赤字で終わる可能性もあります。
一方、ポップアップストアでは、オフライン店舗を構えるリスクを抑えつつ、テストマーケティングが可能です。
ポップアップストアでの売れ行きや、顧客の反応を見て出店を判断することもできるでしょう。
よって、「今後はオフライン店舗でも販売していきたい」と考えている企業であれば、ランニングコストを抑えつつ、店舗での顧客体験を試すことができる点は大きなメリットといえます。
メリット❷:ブランドの認知度アップ
ポップアップストアを出店することで、新たな顧客層にブランドを知ってもらう機会となります。
D2Cブランドにとって、まずブランドを知ってもらうことが大切です。
認知度が低いうちは、売上を上げることすら難しいでしょう。
ポップアップストアは、Web上だけではなかなかアプローチできない層に対して、アプローチできます。
例えば、インターネットを利用しない顧客層にネット上の広告は届きませんが、目の前に現れた店舗であれば、見てみようと思うきっかけになります。
もしも商品を気に入ってもらえれば、これをきっかけにECサイトにも足を運んでくれるかもしれません。
たとえ店舗に訪れたのが小人数であっても、商品に魅力を感じてもらえれば、SNSや口コミでブランドを広めてもらえる可能性もあります。
ポップアップストアを上手に利用すれば、ブランドの認知度アップにつながり、新たな顧客層の獲得につながりやすくなるでしょう。
メリット❸:顧客と直接コミュニケーションを取ることができる
顧客と直接コミュニケーションを取ることができる点は、オフライン (実店舗) ならではのメリットです。
特に、デジタルD2Cは、基本的にオンライン上のやり取りのみであるため、顧客と直にコミュニケーションをとることはありません。
商品を購入するかどうかは、一方的にユーザー自身の判断にゆだねられます。
一方、コミュニケーションを介した実店舗でのやり取りでは、ユーザーのニーズや問題点を掘り下げながら、好みに応じた商品をすすめられます。
このような相互のやり取りがあることで、オンラインで購入したときよりも顧客満足度を高めることが可能です。
加えて、直接のコミュニケーションでは、顧客のニーズを聞き出せることもメリットのひとつです。
ポップアップストアの出店を通して、細かなニーズを把握できれば、商品の課題が分かり、今後の商品開発の参考となります。
メリット❹:SNSによる情報拡散が期待できる
ポップアップストアは「期間限定」であることから話題性を高めやすく、SNSで拡散されやすいというメリットがあります。
SNS拡散によって多くの人に自社のD2Cブランドに興味をもってもらえれば、自社サイトへの流入数アップも期待できるでしょう。
D2Cブランドにおいてマーケティングを考えている方であれば、SNSの重要性はよく理解できるかと思います。
多くの人に注目されるようなイベント性の高いポップアップストアを出店できれば、広告塔としての効果は非常に高くなるといえるでしょう。
SNS拡散を目的としたポップアップストアの成功事例としては、以下のようなものがあげられます。
- ポップアップストア内に、映える写真を撮るブースを用意する
- スタッフがお客さまと商品が写った写真撮影を行ってくれるサービスを用意する
- 有名人を招く
- 内装にこだわり世界観を演出する
- 場所とアイテムでギャップを作り出す(和×海外ブランドなど)
- SNS投稿で割引や支払いができるサービスをつける
最近のD2Cでは、いかに顧客を巻き込んでUGC(口コミ)を発生させるかが重要なため、SNSでの情報拡散が期待できるのは大きなメリットといえます。
上記のような工夫でポップアップストアに「話題性」を取り入れることで、バイラルマーケティング(口コミを利用した拡散手法)としての効果を十分に発揮してくれるでしょう。
メリット❺:出店実績を明記できる
『出店実績』をさまざまな箇所に明記できるようになるのも、ポップアップストアを実施するメリットのひとつです。
D2C事業では、Web上での集客に欠かせないLPへ仕様できる素材・コンテンツが非常に重要です。
理由として、顧客はサイトに記載された「売上NO.1!」「累計売上〇個!」などの情報を見てブランドの価値や信頼性を判断するためです。
出店実績の記載があれば、ユーザーは「ネット上だけの怪しいビジネスではなさそう」と感じられ、購入の決め手になる可能性が高まります。
よって、ポップアップストアを開催することにより『出店実績』をLPでも二次利用できるようになるため、ブランド・サイトの信頼性を高め、CVR向上をはかることができます。
ポップアップストアを成功させるための6つのポイント
ポップアップには多くのメリットがありますが、メリットを実感するためには、しっかりとした戦略が求められます。
ただなんとなく店舗を運営するだけでは、存在感を示せないまま期間が終了してしまうでしょう。
まずは、以下のようにポップアップストア出店の目的を明確にすることが大切です。
- ブランドの認知度を上げる
- 店舗出店に向けテストマーケティングをおこなう
- 「売れる時期」を狙って短期間の売上アップを狙う
- リアルな感想やニーズの聴取
認知度アップが目的ならば、SNSに拡散されやすい工夫をするなど、目的に応じて必要な戦略を立てましょう。
なお、ポップアップストアが失敗する理由は、目的がはっきりしていないことのほか、立地や戦略不足(人目を引かない)などがあげられます。
そこで、知名度がないD2Cブランドが、ポップアップストアを成功させるための6つのポイントをご紹介します。
- 目的に合った出店場所を選ぶ
- 出店時期を目的や業種に合わせる
- 一度で魅力を感じてもらえる商品を並べる
- ブランドの世界観を伝える
- 体験型のコンテンツを用意しておく
- ECサイトへ誘導するための工夫をする
1つずつ詳しく見ていきましょう。
ポイント➊:目的に合った出店場所を選ぶ
ポップアップストアは、以下のようにさまざまな場所に出店されます。
- ショッピングモールの催事場
- 空き店舗
- 駅やイベントスペース
- レンタルスペース
- 関連する業界の店舗の一角を間借りする
ポップアップストアをどこに出店するかは、D2Cブランドの業種や目的に応じて選ぶとよいでしょう。
例えば、アパレル系のブランドであれば、購買意欲の高い人が集まるショッピングモールを利用したほうが、人を集めやすいといえます。
また、小物を販売するのであれば、カフェの一角を間借りした方法などがおすすめです。
関連する業界の店舗を間借りすれば、win‐winの関係にもなり、コストを抑えて開催できます。
エルメスが和の象徴である京都にポップアップストアを出店したように、意外性のある場所に出店し話題性を高めるのもよいでしょう。
自身のブランドの顧客層を見極めたうえで、適した立地・場所にポップアップストアを出店できれば、集客効果をより高められます。
ポイント❷:出店時期を目的や業種に合わせる
売上アップが目的のひとつであれば、ポップアップストアの出店時期も重要です。
特に、飲食系のD2Cブランドであれば、その食品が売れやすい時期というものが存在します。
例えば、チョコレートであればバレンタイン、ギフトに贈りやすい食品であれば帰省時期など、「売れる時期」を狙い撃ちすることで、効率的に売上げアップを目指すことができるでしょう。
またアパレル業界で季節の新作発表が目的であれば、季節の変わり目が最適です。
スーツブランドであれば、卒業や就職の少し前である1~3月が最も購入されやすい時期といえるでしょう。
このように、業種によって売れる時期を見極めることも、ポップアップストアで売り上げを伸ばすうえで重要なポイントとなります。
ポイント❸:一度で魅力を感じてもらえる商品を並べる
ポップアップストアでは、どの商品を陳列するかも重要です。
ポップアップストアは多くの場合、新規顧客層を獲得することが目的のため、基本的に新規の客が多くなります。
新規で訪れた顧客をリピーターにするためには、一番に「その商品に魅力を感じてもらうこと」が重要です。
いくら内装や企画に力を入れようとも、商品に魅力を感じてもらえなければ、顧客との関係はそこで途絶えてしまうでしょう。
具体的には、以下のような商品を陳列することで、新規の客に魅力を感じてもらいやすくなります。
- 見た目が良い商品
- 値段が高すぎない商品
- その店舗でしか買えない商品(期間限定)
- ギフト用の商品
商品を手に取ってもらうため、第一に見た目(デザイン)が重要です。
また、ブランドを知らない人が購入に踏み切りやすくするためには、購入しやすい価格であることも大切です。
手に取ってもらい、なおかつ購入してもらうことで、ようやく商品の魅力を感じてもらえます。
また、期間限定商品は顧客に希少性価値を感じさせられますし、さらにギフトに贈りやすい商品であれば購入動機が生まれます。その人だけで完結せず、誰かに紹介してもらえる可能性も高まります。
このように、ポップアップストアでは、手に取ってもらう工夫(見た目)や、購入してもらう工夫(値段、限定品)などを考えながら、どの商品を陳列するかをしっかり吟味することが大切です。
ポイント❹:ブランドの世界観を伝える
ポップアップストアをマーケティングに利用する場合、どの業種でも共通して重要なポイントがあります。それは、「ブランドの世界観を伝えること」です。
理由として、D2Cブランドの成功のカギは、そのブランド独自の世界観を認知してもらうことであるためです。
「環境に優しい商品開発をしている」
「かっこいい大人に似合うブランドである」
など、成功しているD2Cブランドには、それぞれ独自の世界観があります。
ポップアップストア出店を通してブランドの世界観を伝えられれば、「こんなブランドなんだ」というイメージを顧客に植えつけられ、ブランドが広まりやすくなります。
どのD2Cブランドにも、顧客と共有したい世界観があるはずです。
「理念」と置き換えてもいいでしょう。
ポップアップストアは、そんな世界観を体感してもらう場所と捉えてください。
昨今の技術革新により、品質が良く安いものは市場にありふれています。
そんななかであなたのD2Cブランドを手に取って購買してもらうには、世界観や商品へのこだわりをしっかりと伝えることが大切です。
具体的には、ブランドのこだわりや製品のポイントを伝えられる体験イベントや展示などがあるとよいでしょう。
接客についても、販売実績にこだわる必要はありません。
それよりも、1人でも多くの顧客と接し、ブランドに込められた思いを伝えられるよう意識してみてください。
D2Cブランドにとって、販売の場はあくまでも自社ECサイトです。
「サイトを訪れてみたい!」と顧客に思わせるように、いかに世界観を伝えるかの戦略を立ててみてください。
ポイント❺:体験型のコンテンツを用意しておく
D2Cブランドのポップアップストアでおすすめなのが、体験型のコンテンツです。
例えば、サンプル品の試食や試着などが挙げられます。
製品の良さについて、どれだけ丁寧に言葉で伝えようとしても、限界はあります。
よって、「実際に体験してもらうこと」が、もっとも効率的なアピールになるでしょう。
商品販売スペースよりも、体験スペースやワークショップスペースを広くとるのも効果的な方法です。
実際に手に取り使用することができれば、商品の魅力をダイレクトに伝えることができます。
またこうした体験は、販売促進にもつながります。
人には、相手から受け取ったものに対しお返しをしたいと感じる心理(返報性の原理)があるため、「体験させてもらったから、購入してみようかな」という気持ちになる可能性が高まるのです。
D2Cブランドを購買するとき、商品を買っているのではなく、体験を買っている場合は多く存在します。
・サンプル品をその場で使用してもらう
・SNSに投稿したくなるような、体験型イベントを用意する
上記のようなコンテンツを用意することで、劇的にポップアップストアのマーケティングとしての効果を高められるでしょう。
ポイント❻:ECサイトへ誘導するための工夫をする
ポップアップストアが成功すれば、ブランドに興味を抱いてくれる顧客は増えるでしょう。
しかし、何もしなければそのときだけの関係となり、ECサイトまで訪れてもらえる可能性は低くなってしまいます。
そこで、ECサイトへ誘導するための工夫が重要になります。
以下のような工夫を施し、獲得した顧客を確実に自社サイトへと誘導しましょう。
- ストア限定のECサイト専用クーポンを配布する
- ポップアップストア限定アイテムをECサイト上で販売する
- 購入商品と一緒にQRコードを記載したフライヤー(チラシ)を入れる
- 会員登録で割引きにする
ポップアップストアのイベント感は、訪れる人をワクワクさせるものです。
ちょっとした工夫で、ワクワクした気持ちのまま、自社サイトへと誘導できるようにしましょう。
まとめ
ポップアップストアは、オフラインで顧客とコミュニケーションを取ることができる重要な場所です。
話題性を作り出しやすいため、マーケティングツールとしても有用といえます。
初期のテストマーケティングとしても活用できるなど、D2C事業を展開していくうえで非常に重要なピースとなりつつあるといえるでしょう。
商品やブランドの魅力を余すことなく伝え、顧客の満足度を高めるような仕掛けを用意できれば、ブランドとしても成功に近づくはず。
ぜひ本記事を参考に、ポップアップストアを上手に活用してみてください。